
近年の日本では、中・大規模の地震が増えています。2024年1月1日に発生した能登半島地震は特に記憶に新しいでしょう。そんな情勢から、家づくりにおいて耐震性能を重視する人が増加傾向にあります。そこで今回は、注文住宅における耐震等級の重要性について詳しく解説していきます。
耐震基準とは別!耐震等級とは
耐震等級とは住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が定める住宅性能表示制度における住宅の品質基準のひとつです。耐震等級は住宅の耐震性能を目視では確認しにくいため、等級1〜3の三段階で性能を評価します。耐震等級の取得は任意であり、指定機関で審査を受け、住宅性能評価書を取得すると認定されます。
一方で、耐震基準は建築基準法により定められた最低限守るべき基準で、一定の強度の地震に耐えられる住宅を建てるための指標です。現行の建築基準法は2000年6月1日に施行され、この基準に基づいて建てられた住宅は耐震等級1に相当します。
ただし、耐震等級1の認定を正式に受けるには、住宅性能評価書が必要となります。建築基準法に基づいて建てられた住宅であっても、審査を受けて耐震等級1の認定を受けなければ評価書は交付されません。しかし、建築確認済証や完了検査済証の提示により耐震等級1に相当するとみなされ、実際に耐震等級1の認定を受ける必要はほとんどないとされています。
耐震等級に影響を与えるポイント
耐震等級に影響を与える4つのポイントは、建物の重さ、耐力壁の量、耐力壁の配置バランス、そして床の剛性です。上記4つの要素は、地震に対する建物の耐性を決定するため、家を設計する際に重要な考慮事項となります。
建物の重さ
まず、建物の重さは耐震性に直接影響を与える要因です。建物の重さは構造計算に含まれ、建物の自重が耐力壁に与える負荷を計算します。
たとえば、同じ強度の耐力壁を持つ建物であっても、重い瓦屋根を載せた場合、スレート屋根などの軽量な屋根材を用いた建物よりも耐震性が低くなります。耐震性を考慮する際は、瓦屋根ではなく軽いスレートやガルバリウム鋼板のような素材の選択や、モルタル外壁よりも軽量なサイディングを選ぶなど、建物の軽量化を検討しましょう。
耐力壁の量
次に、耐力壁の量です。耐力壁は、地震や風などからの横圧力に対抗するために建物を支える壁であり、耐力壁の数が多いほど耐震性が高くなります。2階建ての建物の場合、とくに1階に多くの耐力壁の配置が重要です。
1階は2階の重量も受けるため、1階に多くの耐力壁を配置しておくと、耐震性が向上します。広い空間を必要とするリビングを2階に、壁が多い個室を1階に配置した設計により、耐震性能を高められます。
耐力壁の配置バランス
耐力壁の数を増やすだけではなく、適切な配置も重要です。片側に耐力壁を集中させると、その部分が強くなりすぎ、地震が発生した際に反対側に大きな負荷がかかり倒壊のリスクが高まります。
耐力壁は建物全体への均等な配置が、建物の安定性を保つために必要です。
床の剛性
最後に、床の剛性です。耐震性を考慮する際、柱や壁の強度にばかり注目されがちですが、柱や壁を支える床の剛性も重要な要素です。床の剛性が低いと、建物が揺れた際に床がねじれやすくなり、壁が倒れる危険性が高まります。
そのため、構造用合板を床に使用するなどして、床の剛性を高めることが耐震性向上に効果的です。
耐震等級3の家を建てるメリット・デメリット
最後に、耐震等級3の家を建てるメリット・デメリットを紹介します。
メリット
耐震等級3の家を建てるメリットは、耐震性の高さによって地震の被害を最小限に抑えられる点です。耐震等級3の家は、耐震等級1や2と比較して、震度6強の地震でもダメージが少なく、そのまま住み続けられる可能性が高いです。
耐震等級1では建物が倒壊・崩壊せず命を守れる一方で、損傷が激しければ建て替えが必要になるケースもあります。しかし、耐震等級3の家なら損傷が少なく、修繕の負担が軽くなるため、長期的な資産価値を維持しやすいのが大きな利点です。また、地震時に避難生活を送るリスクが減り、家族の精神的な安定にも寄与します。
さらに、耐震等級3の家には住宅ローンの金利優遇や、地震保険の割引といった経済的なメリットもあります。金融機関によっては、耐震等級3の家に対して金利を下げる特典を提供している場合もあります。また、地震保険においても、耐震等級3であれば割引率が最大の50%に達し、耐震等級1の10%、等級2の30%と比較しても非常に高い割引率を受けられます。
デメリット
耐震等級3の家の最も大きなデメリットは、建築コストが高くなる点です。耐震性を高めるために材料や手間が増えることで、設計費用や施工費が上がります。また、木造住宅の場合、耐震等級1では構造計算が必須ではないのに対し、耐震等級2以上では構造計算が義務化されており、構造計算費用も発生します。
さらに、耐震等級3の認定を受けるには第三者評価機関による調査が必要であり、設計や工事の期間が通常よりも長引く可能性があります。結果として、設計や施工が1〜2ヶ月程度延び、仮住まいの期間が増えてその分の家賃を支払い続ける必要が出てくるケースも考えられます。
また、耐震等級3にするための設計制約により、希望の間取りや広さにできない場合もあります。広々としたリビングを希望しても、耐力壁を増やさなければならないため、希望通りの間取りにできない場合もあります。
まとめ
近年、日本では中・大規模の地震が増加し、家づくりにおいて耐震性能の重要性が高まっています。耐震等級は、住宅の耐震性を評価する指標であり、等級1から3までの三段階に分類されます。等級3の家は震度6強の地震でも損傷が少なく、避難生活のリスクを軽減し、修繕費用を抑えられます。また、住宅ローンの金利優遇や地震保険の割引といった経済的メリットも享受できます。一方で、建築コストが高くなり、設計に制約が生じる可能性もあるため、早い段階での計画が重要です。地震に強い家づくりを考える際、耐震等級は長期的な資産価値を保つための大きな要素となります。